他の価値観を貶めないために

自分の好きなものを肯定するために、他を否定するという対人戦略があります。私も時に軽い気持ちでこれを行ってしまう時があります。
しかし、私はこれは自己にとっては無為な、他者にとっては迷惑な行為だと思うのです。


各々には、それぞれの価値観…すなわち基準付けが存在しています。大きなものを好む人、小さなものを好む人…それぞれにそれぞれの価値判断のためのルールがあり、それは互いに矛盾するものではなく、どちらにも正当性があります。
例えば卑近な例として音楽ジャンルの好みで説明すれば「クラシックが好き」という価値観と「ハードロックが好き」という価値観は矛盾せずに共存する事が可能です。なぜならばクラシックにはクラシックの良さが、ハードロックにはハードロックの良さが存在するからです。もちろん、クラシックにはクラシックの問題点が、ハードロックにはハードロックの問題点が存在する事も十分に考えられます。しかし、それは各々のジャンル固有の問題点であり、他のジャンルとは関係ありません。あるジャンルの問題点を指摘しても、他のジャンルの問題点が解決するわけではありません。
だから、ある価値観を否定したとしても、それはその価値観が他の価値観よりも劣っている=他の価値観がその価値観よりも優れているという事の証明にはなり得ないのです。


これはとても当たり前の事実であり、この事を認識しさえしていれば冒頭で紹介した対人戦略を行ってしまうという愚を冒す事はなくなるでしょう。また、他者からこのような対人戦略を持ちかけられたときにも、冷静な対応が取れるようになるはずです。